政治・経済

中心街の将来像再考の時 松本市、商業ビジョンから パルコ再来年閉店

土地区画整理事業で整備した花時計公園。松本パルコ(奥)を意識したまちづくりが進められてきた

 松本市の中心市街地活性化の取り組みが大きな転機に来ている。まちづくりに長年協力してきた大型商業施設の松本パルコ(中央1)が令和7年2月末に閉店することで、商都・松本の求心力を大きく失うことになる。市は閉店後の土地・ビルの民間活用や公共利用を視野に、市商業ビジョン(令和元~10年度)を来年度に見直す考えだ。

 松本パルコは中心街の空洞化を防ぐ役割を果たしてきた。一度目は伊勢町の百貨店閉店を受けた昭和59(1984)年の開業。二度目は、相次ぐ大型店の郊外出店で地盤沈下傾向にあった平成8(1996)年の増築だ。
 増築時は、市が周辺一帯で土地区画整理事業を実施。その一環で市が換地などを支援し、パルコ前に花時計公園を配置した。担当した市職員OBは「パルコ出店を歓迎する地元商店街の機運があり、再開発の原動力になった」と語る。
 平成29年のイオンモール松本開業から2年後、市が新たな商業ビジョンを策定。パルコ、イオンモールを両軸とする中心街全体を一つのモールと捉え、人々が回遊する街を目指した。両店は競合しつつも、連携して販促キャンペーンを行うなど切磋琢磨し、行き来を促した。
 そんな中、パルコが2年後の閉店を発表。土地・建物の利活用について、パルコの今枝立視常務は「非常に責任を感じる。何らかの貢献をしたい」とする。
 市は利活用の支援、調整に前向きだ。臥雲義尚市長は「市街地の核となる場所で、利活用の可能性は大きい」と注視。「分散型市役所ということで公共事業と民間投資を連動させたまちづくりを4月以降本格的に動かしたいので、さまざまな選択肢を念頭に置きながら検討したい」とし、民間事業者の再開発の動きが不十分な場合、公共利用する可能性にも含みを持たせる。
 こうした街づくりの転換期が、商業ビジョンの中間見直し時期と重なった。市は、パルコを含めたさまざまな商業関係者とともに、新たな中心市街地の将来像を再考する方針だ。