教育・子育て

不登校の子供たち公民館が安心の居場所に 松本の「ほっとスペース」徐々に定着

ほっとスペース松原地区公民館の初の社会見学で、花の収穫を体験する子供たち

 さまざまな事情で学校に行けない不登校の児童生徒らに、公民館を活用して居場所を提供する事業「ほっとスペース」が松本市で定着してきている。市教育委員会の学校教育課と公民館が連携して一昨年秋に松原地区公民館に開設し、今月14日には笹賀公民館でもスタートした。学校とも家とも違う第3の居場所が、子供や保護者の心のよりどころになっている。

 16日は松原地区のほっとスペースの利用者が社会見学を実施した。通常は毎週木曜午後に解放される公民館で自由に過ごすが、開設から1年半がたち互いに打ち解けてきたためスタッフが初めて企画。同市笹賀の農家・伊藤勝基さん(35)の花卉栽培のハウスで、アルストロメリアの収穫を体験した。
 参加者は小学1年~中学3年生や家族ら12人。学校行事になかなか参加できない子供たちにとって「挑戦と失敗を繰り返した」伊藤さんの人生経験を聞き、農業に触れる体験は新鮮そのもの。「すごく楽しい」と夢中になり、同伴した母親の一人は「とても貴重な経験」と喜んでいた。
 市教委は学校への復帰を援助する「中間教室」を3カ所に設けているがいずれも市内北部で、南部の環境整備が課題になっている。そこで関係者が「できることから」と松原地区公民館を週1回で解放したところ、必要とする子供たちに浸透してきた。解放中は不登校支援アドバイザーや臨床心理士が気さくに、温かく見守るスタイルも定着。利用する中学3年の男子生徒(15)は「人の壁を感じない場所。居心地がいい」と話す。
 笹賀のほっとスペースは原則火曜午後に開設する。
 事業担当の横林智子・不登校支援アドバイザーは「ここに行けば必ず誰かに会えるという環境が子供たちの安心につながる。ほっと一息つける場所がそれぞれの地域に増えていくことが一番の理想」と話している。