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安曇野市の地域おこし協力隊員・中村知香さん 天蚕をPR 浸透に手応え 31日に退任後も糸作り継続へ

中村さんが繰糸した天蚕の生糸やつむぎ糸、天蚕糸

 安曇野市の地域おこし協力隊員・中村知香さん(43)=穂高有明=が、穂高有明地区の伝統産業・天蚕の振興に携わった3年間の任期を終えて31日で退任する。天蚕の飼育や天蚕糸の生産、PR、教育活動などに熱心に取り組み、糸作りの技術も身に付けた。着任した3年前に比べ、「天蚕を知っている人が割と増えている」と手応えを感じている。

  熊本市出身の言語聴覚士で、別の仕事に挑戦してみようと令和4年4月に協力隊員として採用された。退任後も市内に居住し、市天蚕振興会繰糸部で天蚕糸の作り手として天蚕に関わっていく。
 天蚕は天然の蚕(ヤママユガ)で、天蚕糸は繊維のダイヤモンドとも呼ばれている。穂高有明地区で江戸時代に飼育が始まり、病気や降灰被害などで途絶えたが、昭和48(1973)年に当時の穂高町が復活させた。
 協力隊員の活動で飼育に携わり「大きく育っていく幼虫を見るのが楽しかった。愛着が湧いてくる」と振り返る。教育現場で天蚕を学ぶ子供たちの純粋な目に触れ「天蚕の文化はずっと残っていくだろう」との思いを強めた。市に対し「天蚕を未来に残すため、プロモーション活動をしてほしい」と願う。
 登山が趣味で、山岳遭難予防を目的としたプロジェクトも有志と手掛けている。「3年間無事に終えられるのは市役所や市民の皆さんのおかげ。安曇野は縁もゆかりもなかったが、縁もゆかりもできた。ますます居心地の良い土地にしていきたい」と展望する。