新潟・小千谷市から安曇野へ 老舗ようかん店、新天地で奮闘

新潟県小千谷市から昨夏、安曇野市三郷温に移転した、明治29(1896)年創業の老舗ようかん専門店「本丸池田屋」が、新天地での事業展開に奮闘している。6代目当主の本田啓邦さん(42)と妻の麻里さん(42)が、創業地で支持されてきた看板商品を作り続けながら、顧客層と知名度を一から築き上げる新商品を次々と打ち出している。
寒天を煮溶かし、砂糖とあんを加えて練り上げる練りようかんを手掛ける専門店だ。手練りの初代製法と味を本田さんが復刻させた「助七やうかん」をはじめ、カカオ豆を使った「ショコラ羊羹」など約10品目30~40種類を製造、販売する。
移転後、力を入れている「ぽちここる」は、内側がアルミのドリップバッグにようかんを流し込み密閉した商品。薄い形状の衛生的な食べやすさや優れた保存性、携帯性は登山者に好評で、プレゼント需要も高い。「あんバター」や「ブルーベリー」「ミルク」など変わり種全16種類を展開する。
寒天原料の調達先などとしてかねて縁があった伊那食品工業(伊那市)の協力で、同社子会社が運営するHAMAフラワーパーク安曇野内へ出店し、従業員2人を新たに迎えた。登記上の法人所在地も近く変更し、安曇野を拠点とした事業に専念する。パッケージデザインも担う麻里さんは「いいものはいいと認めてもらえる土壌がある」と手応えを話す。
厳しい経営環境にあった5代目が廃業を決めていた中、鮮魚卸売会社で働いていた当時26歳の本田さんが、存続を願う創業家の期待に応える形で店を継いだ。平成30(2018)年度には日本青年会議所菓子部会長を務めるなど「異業種からの転身を強みに、固定概念や伝統にしばられない挑戦をしてきた」。
一方、夫婦2人で、現在8~22歳になる5人の子育てと事業の両立は容易ではなく、松本市島立出身の麻里さんの故郷を頼り、移住を決めた。本田さんは「老舗の看板を時代や与えられた環境に合ったやり方で磨き上げていきたい」と話す。