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松本駅前にムクドリ大群 鳴き声・ふん害が深刻で松本市は対応に苦慮

しらかば大通りの電線に止まるムクドリの群れ(右写真)、大量のふんで白く汚れた電線の下の歩道(左下写真)、鳴き声が大きいムクドリ(左上写真)

 JR松本駅(松本市深志1)東側の「しらかば大通り」の電線にムクドリの大群が飛来し、騒音やふん害が問題になっている。松本市は30年ほど前から街路樹のせん定などでムクドリ対策を講じているものの、追い払っても駅周辺でねぐらの場所が変わるだけの「いたちごっこ」の状況が続く。通りには宿泊施設が並び、多くの観光客が訪れる松本の玄関口でイメージの悪化は避けられない。決定的な解決策のない中、市が対応に苦慮している。

 29日の午後5時半過ぎ。千羽超のムクドリが一斉に電線に押し寄せ、「ギャー、ギャー」という大きな鳴き声が周辺に響く。落下するふんを警戒し、傘を差して歩く人の姿も。東京から出張で訪れた会社員の数田皓平さん(31)は「ふんで歩道が汚れていて不快だ」と足早に通り過ぎた。
 市森林環境課によると、しらかば大通りへの大群の飛来は昨年10月に始まった。7~9月まであがたの森通り(駅前大通り)の街路樹に飛来していたが、市や県などがスピーカーや拍子木などを使い大きな音で追い払う対策をしたところ、ねぐらの場所を変えたとみられる。
 通り沿いの宿泊施設の支配人補佐は「宿泊客から『鳴き声がうるさい』と多くの苦情がある」と話し、別のホテルの支配人は「気温が高い時期はふんの臭いがすごい。清掃が追いつかない」と憤る。
 街路樹のせん定や音で追い払う対策をしてきた市森林環境課の有害鳥獣担当職員は「宿泊施設がある場所は光や大きな音で追い払うことができない。非常に困っている」と話す。中部電力が電柱に音を出す機材を設置し、電線に障害物を付けたが効果はいま一つだ。
 ムクドリはもともと郊外の森林をねぐらとしたが、タカなどの猛きん類の襲来を避けるため、電灯で明るい駅前や街路樹に集まるようになった。繁殖期が終わった7月から冬にかけて集団でねぐらをつくる習性があり、全国の自治体で社会問題化している。
 鳥類学者で信州大学名誉教授の中村浩志さん(78)は「集まり始めた初期の段階で、継続して追い払うことが必要」と指摘する。ムクドリのねぐらを森林に戻すことは可能だとし、「行政がやる気を起こさないと駄目。市職員だけでなく住民も協力し、粘り強い対策を求めたい」と助言する。