全国的に珍しい「日月二星の涅槃図」発見 松本の廣澤寺と大庭町会で

太陽と月の「日月二星」が描かれた涅槃図が、松本市内で確認された。里山辺の廣澤寺と、島立の大庭町会の涅槃図だ。お釈迦様の入滅を表す涅槃図には満月が描かれることが一般的だが、市内では和田の西善寺でも日月二星の涅槃図が継承される。全国的にも珍しい構図が限られた地域で複数確認されたことを受け、市立博物館は来月、特別展「春を待つ涅槃図」で一連の涅槃図を公開する。
涅槃図は、廣澤寺が縦1.89メートル、横1.44メートルで絹本着色、大庭町会は縦1.73メートル、横1.09メートルで紙本着色。年代や絵師の情報は分かっていない。いずれも横たわるお釈迦様と、それを囲む数十人の弟子や菩薩、動植物が描かれ、向かって左上に白い月が、右上に赤い太陽が輝く。多くの涅槃図は入滅した2月15日にちなんで十五夜の満月が描かれるが、日月二星の涅槃図は東京大井の如来寺や栃木県日光市の観音寺など、全国でもごく限られるという。
日月二星を巡っては市文化財審議委員を務めた郷土史家の故・宮島潤子さんが20年余り前に、西善寺の涅槃図の希少性を論文に著している。その後、木下守・前市立博物館長が廣澤寺や大庭にも同じ構図の涅槃図があることに気付き、背景を考察してきた。「陰と陽、男と女などの二元論に照らしたとき、双方を描くことであまねく全てを救う象徴としたのではないか」と話す。
一方、希少な構図がなぜ松本に複数あるのかは推測の域を出ない。前田利惠学芸員は「一般公開を機に新たな情報が寄せられるように」と期待している。
特別展は2月1日に開幕。日月二星を含む市内の涅槃図16点のほか、善光寺大勧進蔵の涅槃像などを一堂に公開する。