災害時の水源共有浸透 松本市の協力井戸制度登録21件

松本市が昨年9月に始めた災害時協力井戸制度は4カ月余りで登録件数が21件となり、取り組みが徐々に広まっている。発災後の水の確保が課題として浮かび上がる中、自家用水源を共有し、地域防災に貢献しようとする人が増えているようだ。
災害時に生活用水を無償で提供できる市内の井戸が登録できる。個人のほか、企業や団体所有の井戸も登録できる。登録した井戸には「災害時に生活用水として利用できる井戸があります」と記された縦19センチ、横11センチの標識を掲げ、平時から水源の存在を周知する。
出川町の牛山信一さん(73)は昨年10月、自宅の庭にある井戸を登録した。家庭用電源で動くポンプで約40メートルの深さから水をくみ上げる。ポンプの電源を非常用発電機に切り替えることで停電時でも使用可能だ。井戸は現在の自宅を新築した平成22(2010)年に設置した。普段は家庭内で飲料水として使用している。牛山さんは30年前の阪神淡路大震災で「防災への意識が大きく変わった」と話す。震災後は家具の固定など、自宅でできる防災対策に取り組んできた。昨年、市民タイムスの記事を読み、近くの双葉町公民館に防災井戸が設置されることを知り、自宅の井戸も防災に役立てたいと考え、制度に協力した。牛山さんは「何かあった時は必要とする人に自由に使ってほしい」と語る。
登録申請は市危機管理課のホームページまたは電話で受け付けている。同課は再来年までに100件の登録を目指しており「地区によってはまだ登録が少ない所もある。さらなる協力を」と呼び掛けている。