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クルマ社会を安全に快適に まつもと道路交通考・第1部①「道路」「交通」を考えよう

渋滞が激しい松本市の国道19号高宮交差点付近。同交差点は日本損害保険協会が昨年発表した県内の人身事故が多い「危ない交差点ワースト5」で2位になった

 道路の渋滞緩和のため、そして車が排出する温室効果ガス削減のために、マイカーの運転を控えてバスなどの公共交通を利用しようという動きが松本地域でも強まってきた。各市町村は公共交通網の整備・維持に知恵を絞って努力しており、利便性も高まりつつある。

 ただ、松本地域は買い物も通院もマイカーに頼っている人が大多数の「クルマ社会」だという現実がある。松本市が令和3年に行った市民アンケート調査(回答数2434件)結果によると、車の運転について「日常的にしている」が81%に上った。しかも、年代別では「日常的に運転している」は40代の74%に対して、70代で87%、80代以上でも85%に達し、高齢者ほどマイカー依存の生活を送っている実態が浮き彫りになっている。
 こうした状況を踏まえれば、車を安全・快適に運転できるように道路環境を改善したり、交通事故を減らすために安全運転意識を浸透させたりすることが、中信地域の暮らし向上にとって不可欠だ。本格的な道路整備は予算も時間もかかり、渋滞などの課題解決へのハードルは高い。だが、いろいろな制約の中でも「できること」「やらなければならないこと」はあるはずだ。
 例えば、道路の危険箇所やボトルネックを解消するための局所的な改修が考えられる。交通規制の見直しや信号機の時間調整などはどうだろうか。「松本走り」のような危険な運転を根絶する意識を地域全体で共有することも忘れてはならない。
 日本交通心理学会・元会長(現運営委員)の石田敏郎・早稲田大学名誉教授は「道路環境の改善と安全運転意識の向上を図るため、地域全体で取り組んでいく必要がある」と指摘する。
 マイナス面が指摘される松本地域の道路交通の改善に向けて、最も切実な問題意識を持っているのは日々の生活で道路を歩き、車を運転している住民一人一人だろう。そうした住民の思いが、状況改善の原動力になるはずだ。市民タイムスは読者の皆さんの声に耳を傾けながら、道路や運転の問題を掘り下げ、交通安全を推進し、暮らしの向上を願う企画報道「まつもと道路交通考」を展開していく。