2025.1.8 みすず野
寒に入り、これから寒さは増していく。昔に比べれば、その厳しさはさほどでもないとよく聞くがそれでも一年で最も寒い時期に変わりない。体を温めるものがあると思わずほっとする◆唐の詩人、白楽天は「林間煖酒焼紅葉」(林間に酒をあたためて紅葉をたく)と歌って悦に入っていると、日本語学者の森田良行さんは『日本語をみがく小辞典』(角川ソフィア文庫)でいう◆「紅葉を惜しがって冷や酒をあおってみたところで面白くも何ともない。そんな野暮なまねをしないところに白楽天の天性の詩人たるゆえんがある」と説く。酒の燗も「適度に温めることで醍醐味が得られるのであって、熱くしすぎては台無しだ」という言葉には、酒を好む多くの人がうなずくだろう◆長いこと、じっと胸に抱いておくのも暖める方法だと語る。長く暖めておくことで、すぐには得られぬこくとうまみが生じるとも。「久しく音信のない旧友と旧交を温めてみるのもいいかもしれない」と。年々少なくなっていく年賀状の中に、今年を最後に、という旧友からの1枚があった。何年も会っていない。ますます遠くなるようで寂しさが募るばかりだ。