連載・特集

2025.1.31 みすず野

 きょうは「晦日正月」。といってもほとんど耳にすることがなくなった言葉だ。正月の終わりの日として祝うところもあるそうだが心当たりはない。松の内に年始回りをしなかった家を訪ねる日とする地方もあるとか◆小学校の寒中休みはこの日が最後だった頃もあった。家では何か決まったものを食べた記憶もあるが思い出せない。こうして伝統がまた一つ消えていく◆平地はほとんど雪のない1月だった。雪かきをしない暮らしは楽だ。そこそこ寒かったから、冬の風情はあれこれ感じている。昼食に入った店でかす汁が出て喜んだが、もう終わってしまったようだ。ふうふうと冷ましながら口に入れると、体だけでなく心も温まる気がする◆来週は立春だがそれは暦の上のこと。寒い日は当分続く。鍋料理がうまいという日々だ。伝統的な鍋の湯豆腐は、京都の禅寺の名物で「豆の利用は仏教とのかかわりが深い」(『お皿の上の生物学』小倉明彦著、角川ソフィア文庫)そうで、本家は豆腐だけを昆布だしで煮るという。タラを入れるとタラちり、フグだとてっちり。エビを入れても「エビチリ」にはならず「それは別の料理か」と。