2025.1.21 みすず野
必要に迫られて、森鴎外と関連の作品を読まなければいけなくなった。寝転がって読むわけにもいかず机に向かっている。同じ文豪でも夏目漱石と比べれば少し読者が少ないかもしれない◆文京区立森鴎外記念館という建物があり、そこで開かれていたコレクション展「文学とビール」に展示されていたという妻・志げの手紙を平松洋子さんのエッセー「鴎外先生とビール」で読んだ(『ビールは泡ごとググッと飲め』(筑摩書房)。相手は耳鼻咽喉科医で鴎外の親友の賀古鶴所。鴎外と妻の会話が書かれている◆志げが賀古にお礼として浴衣とビールをあげてもいいか聞く。「ゆかたにビイルなんか賀古は喜びは/しないよ」「ほんとね こん度いらっしゃるときつとあのゆかたを/着てビイルを呑めといふのですかちつとさむいなあ/なんて仰つしやるでせう」「云ふね 云はれないさきにこのゆかたを着て/ビイルを呑んで下さいと書いたらどうだい」◆大正5(1916)年に書かれた。平松さんは「夫婦のやりとりがそこはかとなくユーモラスで、うれしくなる」と書く。森家では来客をビールでもてなし贈答品にも使っていたそうだ。