2025.1.11 みすず野
店の前に、のぼりが幾つも立ち並ぶ本町通りを多くの人々が埋め尽くしている。江戸後期の天保14(1843)年に描かれた「善光寺道名所図会」に載る、あめ市の様子だ。幕末や明治には、商業の神様の祭典として全国的に知られた。近隣はじめ江戸や近江といった遠方からも松本の市神様にのぼりや灯籠が奉納された◆商都の新春を彩る松本あめ市がきょう、明日と開かれる。全国あめ博覧会・即売会や、物産市が展開される。12日は中心市街地が歩行者天国となり上杉、武田方に分かれての綱引き「塩取合戦」もある◆数年前になるが、俳人・小林貴子さんが弊紙連載中の「季語って楽しいⅡ」で「松本飴市」が全国版の大きな歳時記に載っていると紹介していた。例句に正岡子規の高弟・上原三川の「飴市の風荒れて星晴れにけり」を挙げていた。三川は、島内小学校長を務めた教育者で、戦没学徒の手記を集めた『きけわだつみのこえ』で知られる上原良司の祖父だ◆中心市街地のにぎわいに貢献してきた大型店の閉店が間もなく相次ぐ。商都として名をはせてきた街を次代へ引き継ぐのに踏ん張りどころとなる。ピンチを好機へ。