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松本山雅あと一歩・・・「主将で10番」菊井悠介が重圧の中で躍動

目標がついえて涙に暮れる松本山雅の菊井主将

 松本山雅FCはプレーオフ決勝の7日、敵地でカターレ富山と2―2で引き分け、規定により4季ぶりのJ2復帰はならなかった。現地に約4000人の山雅サポーターらが駆け付け、地元では観戦イベントも開催。悔しい結果に終わったが、残り1枚の昇格切符を懸けて全力を尽くした選手と共に戦った。

 時間にすればあと数分。得点で言えばたったの1点。言葉にすればわずかだが、それが結末を大きく書き換えた。「『いいチーム』で終わったのが悔しい。昇格して『強いチーム』で終わりたかった」。J2復帰に迫った集団を率いた菊井悠介は、そう絞り出した。
 現体制で迎えた2季目のシーズン。陣容の充実度に期待が膨らんだチームでエースナンバー「10」を背負い、主将も託された。だが積み上げに結果が伴わず、早々に目標を下方修正せざるを得なかった。順風でなかったことは、プレーオフに臨まなければならなかった現状が物語る。
 ふがいない試合に客席から怒気をはらむ声が飛ぶことは一度や二度ではなかった。状態は上向かず、個々が不満や葛藤を抱えてきたであろうことは想像に難くない。それらをおもんぱかった上で「全員が歯を食いしばって後ろだけは見ず、進めたかは分からないが、何ミリかでも前に出ようとした結果が今」だと強調してきた菊井。昇格への覚悟と連勝がよりどころとなった一体感に手応えを深めて臨んだ、昇格切符を争う舞台だった。
 チームを優先した分、個人成績に昨季ほどこだわりを持たなかった。それでもリーグ戦は6得点10アシスト。プレーオフでも準決勝では同点弾を演出し、この試合も左CKから追加点を導くなど気を吐いた。
 自身なりの主将像や10番像を模索し続けた今シーズン。取材時に漏らした「孤独」とのひと言や、お気に入りの曲の歌詞に心情が重なって涙があふれたと明かしたエピソードに、背負ったものの重さがにじむ。試合後に応援席に向かう途中、こらえていた感情があふれたのだろう。ピッチに突っ伏した。「最後に10番として、キャプテンとしての仕事がしたかった」。つぶやく言葉が寂しく響いた。