連載・特集

2024.12.24 みすず野

 「行きずりに聖樹の星を裏返す」(三好潤子)。聖樹はクリスマスツリーだと『厨に暮らす』(宇多喜代子著、NHK出版)で知った。クリスマスの傍題(副季語)で、降誕祭、聖夜、聖歌などもある。この句は「無意識にきらきら光る星を裏返す。街の喧騒の中で味わう孤独感の出た句」だと◆著者は、クリスマスを「歳末行事の花形」といい、本来は静かで敬けんな祈りの日だが「いつしかデパートや商店街にクリスマスツリーが輝き、サンタクロースが現れジングルベルが鳴り響く、賑やかな日になってしまいました」と記す◆『合本俳句歳時記』(角川書店)は、クリスマスをキリストの誕生日が「ヨーロッパにおいて土俗の冬至の祭と習合」して「教会や各家庭では聖樹を飾り、祝う」と説明する◆欧米の多くの歌手やミュージシャンは、クリスマスソングだけを収めたアルバムを発表している。米国で発売されたクリスマスの童歌のような曲集が手元にあるが、1分に満たない短い歌も含めて、何曲も収められている。クリスマスを正月に置き換えてみると、そうした歌は比較にならないほど少ない。行事の意味合いの違いからだろうか。