連載・特集

2024.12.22 みすず野

 野鳥のメジロが熟れた柿をついばもうとしている写真が過日、弊紙を飾った。愛らしい姿に目と心を引かれた。毎週火曜日掲載の読者投稿写真欄だ。安曇野市豊科の87歳の男性が「今年も珍客のメジロさん」の題名で寄せていた◆『里山の野鳥ハンドブック』小宮輝之監修(NHK出版)に、目の回りの白さが名前の由来で、刺しゅうの縫い取りのように見えるため、漢字で「繍眼児」とも書く│と教わる。池田町に住んだ野鳥研究家の故・田中宏一郎さんは著書で、仲間と何羽も隣り合わせで押し合うように眠るねぐらの様子を「めじろ押しに例えられ、その光景がとてもかわいらしい」と伝える◆田中さんは巣にも触れ、巣材はイネ科の草の茎や羽毛・獣毛。作りは小ぎれいだが、下からのぞくと透けて見えるほど簡単な作り方という。『新ヤマケイポケットガイド野鳥』には「コケなどをクモの糸でからめた椀形の巣を、小枝につり下げるようにつくる」と載る◆色が似ていてウグイスとしばしば間違われる。美声に期待しがちだが、ウグイスの姿はメジロほど見栄えしない。用法は違うが「天は二物を与えず」のことわざを思い出す。