2024.12.1 みすず野
メールの時候のあいさつは「今年もいよいよ押し迫ってまいりました」でいいだろうか。1年の締めくくりとなる、きょうから師走◆松本の師走の風物詩に「お神酒の口」製作がある。お神酒の口は正月の縁起物。細かく裂いた松本市中山産の真竹を緻密に編んで松や梅、宝船の形に仕立てる。幾重にも重なる曲線の美しさが特徴だ。神棚に供えるお神酒のとっくりに挿して福を呼び込む。松本市原の矢澤商店で作られている。作り手は、矢澤家4代目の千野恵利子さん(66)のみになった◆長野県民俗の会会員で松本市文書館特別専門員の窪田雅之さんが弊紙で連載した「ふるさとの民俗」で歴史を記している。矢澤家のお神酒の口作りは江戸後期の天保12(1841)年生まれの嶋吉さんが初代だ。以来、代々受け継がれ、平成10(1998)年に矢澤家「家伝」の技術は「松本のミキノクチ製作習俗」として国選択無形民俗文化財になっている◆後継者がなく、技術の伝承が課題に浮上する。簡単に解決できない課題で、勝手も言えないが、美しい曲線の竹細工が年の瀬の縄手通りでいつまでも販売されることを願わずにはいられない。