選択的夫婦別姓理解遠く 議論の深まり市民切望

国連の女性差別撤廃委員会が先月末、夫婦同姓を義務づける民法の規定を見直して選択的夫婦別姓制度を導入するよう、日本に4回目の勧告をした。選択的夫婦別姓は、勧告の前に行われた衆議院議員選挙の争点の一つにもなったが、理解が広がっているとは言えない状況だ。議論の深まりを目指し地域で活動する人の思いを聞いた。
衆院選でジェンダー政策の争点化を目指して設立された県民有志の会「ジェンダーを考える長野県民の会」の朝倉彩香さん(35)=松本市里山辺=は今年4月に結婚した時、姓について2カ月間にわたってパートナーと話し合った。結婚で姓を変更するのは9割以上が女性という事実や国家が家族の形を決めることに違和感を覚え、事実婚も検討したが、入籍を望む夫が姓を変更することで決着した。
煩雑な名義変更手続きに申し訳ない気持ちになったが、夫が「周囲の意識が変わるきっかけになるかもしれない」と言ってくれて「うれしかった」と振り返る。ジェンダー問題は意識の高い男性が増えることで改善する面もあると感じ「勉強会などで理解を深めていきたい」とする。
松本市議会議員の花村恵子さん(57)も結婚して2年間は籍を入れなかった。テレビ局勤務で仕事上の人脈や関係性は全て旧姓で築いてきた。最終的に住宅ローンが組めなかったことが入籍の理由だが、納得いかないものは残った。
同市議会は6月定例会で「女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求める意見書」を可決、花村さんも賛成討論した。選択的夫婦別姓問題も含めたあらゆる面での女性差別撤廃に向け「町会役員など年配の男性が多い環境を、若者や女性にとって魅力的なものに変えていく地道な取り組みが大切」と見据える。