塩尻・平出博物館70周年に 12月1日まで記念のミニ展示 建設当時の資料50点紹介

塩尻市の平出博物館が5日、昭和29(1954)年の開館から70周年の節目を迎えた。同館は12月1日まで、建設当時の設計図や写真など関係資料約50点を並べる記念の「ミニ展示」を開き、建設に関わった人たちの思いを現在に伝えている。
展示では、後に塩尻市の第3代市長になる花村政温・宗賀村長が、昭和27年に国や県に宛てた「平出遺跡保存館設立」の要望書や教職員に向けた寄付依頼、工事見積書が並ぶ。
建設図面は、東京大学の建築学の権威だった藤島亥治郎教授が手掛けた。岩手県平泉町の中尊寺や毛越寺の整備など文化財保護に携わり、26年には古墳時代の復元住居を平出で全国で初めて完成させた。
総事業費は502万円で、国・県・宗賀村以外からの寄付金などが5割近くの245万円を占めた。歴史学に造詣が深く、平出遺跡の発掘現場にも訪れた、上皇陛下の叔父で故・三笠宮が1万円を寄せ、建設委員会名誉顧問となる尽力もあった。村長の要望書からわずか2年のスピード建設だ。
歴史研究に熱心な宗賀小の原嘉藤教諭が、民家で見いだした「緑釉水瓶」が学術調査や博物館建設の礎になったことも紹介している。
老朽化した現建物は耐震不足で、土砂災害特別警戒区域に当たることから、移転改築のため令和5年度に新博物館の基本計画が策定された。具体的な事業着手の時期は未定だが、小松学館長は「開館当時さまざまな人が力を発揮し、大勢の支援があった。新博物館も市民ら多くの人の力が必要」と語る。
入館料300円。問い合わせは同館(電話0263・52・1022、午前9時~午後5時、月曜・祝日の翌平日休館)へ。