連載・特集

2024.11.13 みすず野

 石破茂首相率いる第二次石破内閣がスタートした。元衆院議員で経済企画庁長官などを務めた長野市出身の田中秀征さんは、近著『石橋湛山を語る』(集英社新書)で歴代首相などをめぐり、評論家・佐高信さんと対談している◆「特別に立派な総理だと思っている」として挙げるのは石橋湛山、村山富市、宮澤喜一の3氏。このうち、宮澤さんは静かなブームが起きているという。伝記が出版されたり、大量の日記が発見されたりしたこともあるが「何よりも劣悪な政治の現状が、氏を呼び出しているのだろう」と◆宮澤さんのエピソードとして語られるのは、昭和16(1941)年2月に起きた「7回り半事件」。女優の李香蘭(山口淑子)さんの誕生日に、日劇に駆けつけて周りを取り巻いたファンが7周半になった。当時の新聞は不謹慎だと書く。前年の三国同盟などで時勢は緊迫、暮れに真珠湾攻撃に至る◆東京大の教授は「この事件について記せ」と試験の問題に出した。学生だった宮澤さんは「自由を謳歌する若者たちの痛快な出来事」と書く。教授はそれに「優」をくれた。田中さんはいう、「僕はその話が大好きなんだ」と。