地域の話題

昭和の郷愁・火の見やぐら 塩尻市内に53基 進む老朽化、減少続く 

地域の風景に溶け込んだ火の見やぐら(吉田)

 塩尻市内には53基が残っている。地域を見守ってきた火の見やぐらは、昭和期から平成期を経て減少が続いている。老朽化に伴う安全確保や、半数が使われていない現況などを踏まえて次第に撤去される一方、新設されることはなくなっている。

 半鐘やサイレンを備え、火事などの際には周囲に知らせる。送水ホースをやぐらに掛け、干すためにも使われてきた。住宅地や農地など立地はさまざまだが、地域の安全のシンボルとして立つ光景は、どこか郷愁を誘う。
 やぐらを寄贈したり、設置に当たって寄付金を寄せたりした人たちの名前を刻む銘板を取り付けたものがある。高出のやぐらは「近火」「応援」などの種別によって異なる鐘の打ち方を記した消防信号の案内板も備えている。
 市は設置場所、付属設備、塗装の状況などを把握している。本年度は老朽化で1基が撤去されたほか、別の1基が県道拡幅に伴ってなくなる。昨年度も1基が撤去された。
 市消防団の中野清志団長(55)は、平成元(1989)年に入団し、断続的に団活動に携わってきた。打鐘やサイレンによる火災防止の呼び掛けは、平成期の中頃まで行っていたという記憶がある。やぐらが少なくなっている状況に「古くなったものも多い。時代の流れで仕方がないが、寂しい」と話す。