連載・特集

2024.11.28 みすず野

 冬季限定ビールという商品が、複数のビール会社から発売されている。銘柄に「冬」の文字が入っている缶ビールもある。ビールは歳暮の代表的な商品のひとつ。冬でもビールを飲む人が大勢いるということだ◆まさかビールを温めて飲むことはしないだろうから、冷たいビールを部屋で飲む。何も暖房のない所では寒くていられない。冬でもビールが売れるのは、住宅の暖房が充実してきた証だろう◆終戦後しばらくは「掘炬燵と火鉢だけが暖房装置であるという時代」(『住まい方の思想』渡辺武信著、中公新書)だったから、冬に住宅内でビールを飲むなどということは考えられなかったに違いない。著者は「暖房は冷房に比べて、ずっと本質的な役割を持っている」といい、家の中が暖かいということは、人がそこを自分の場所と感じて「落ち着き、くつろぐための一つの条件であるような気がする」と語る◆暖かい室内は「豊かさ」のひとつの在りようだ。半世紀以上前に比べて暖房の方法は随分充実した。冬期間のビール消費量と暖房の関係を調べれば面白いかも。そんなことをぼんやりと考えるとは、ビールに少し酔ったかな。