2024.11.26 みすず野
今年届いた郵便物に手紙の類いがあっただろうかと考えたが、年賀状以外にはカードの利用状況や車検の案内、年末調整用の保険会社の通知くらいしか思い浮かばない。私信と呼べるようなものは、一通もなかった◆受け取るだけでなく、差し出した記憶もない。友達と長い手紙をやりとりしたり、思いついて絵はがきを送ったりしたのはもう随分前のことだ。相手があることだから、一方だけの事情ではなく互いにだんだん発信しなくなったのだ◆作家の福永武彦は「手紙について」というエッセーで「この頃私たちは手紙というものをあまり書かなくなった。これは人間が無精になって来たというせいもあるだろうし、電話が津々浦々まで通じているから、大抵の用件は電話で済ませられるということもある」と書いた(『日本の名随筆・読』作品社)◆書かれたのは昭和45(1970)年。半世紀以上前でこうだった。文章も写真も送れるスマホを誰もが手にする時代。郵便料金が値上がりするのも無理ないことか。年賀状をどうしよう。コンビニに並んでいる年賀はがきを見ながら考える。年とともに無精になっているのは間違いない。