2024.11.19 みすず野
「寒いね」と同僚と言葉を交わす朝がやって来た。日曜日には畑の片付けをしていたら、額から汗が流れ落ちた。いつまで暖かい日が続くのだろうと思ったが、季節は忘れることなく追いついてくる◆街路樹の葉が赤や黄色に変わり、根元には落ち葉がたまっている。里山の木々も色付いて、間もなく冬の雑木林の景色が見られる。あまり考えたくないけれど、今年の残りが40日余りになっている。日は短くなるばかりで、時々心細くなる◆寒くなるとなぜか甘い食べ物が無性に欲しくなったのは20代。「カップ汁粉」という商品が売り出された頃で、毎年本当に甘いなと少し持て余しながら、満足した思い出がある。厄年を過ぎた頃から、かんをした酒で体を温める喜びを覚えた。これはいまも寒い夜の楽しみになっている◆鍋物のシーズン到来でもある。スーパーにはさまざまな鍋を味わえるスープなどが並ぶ。定番のおでんは冷えた体を温める。湯豆腐もいい。作家・川上弘美さんの初句集が文庫化(『機嫌のいい犬』集英社文庫)された。その中の1句。「楽しさは湯豆腐に浮く豆腐くづ」。杯の向こうで揺れる湯気が見えるようだ。