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芸術家が滞在 制作励む 木祖村 郷土館拠点 住民と交流も 本年度スタート

木祖小児童と一緒に木材を利用した彫刻のワークショップを楽しむ渡邊さん(奥)

 芸術家が地域に滞在して創作する「アーティスト・イン・レジデンス」が本年度、木祖村で始まった。来年開館50周年を迎える村の郷土館が創作拠点となっているのが特徴だ。村は「活動の場」の提供を通じて若いアーティストを支援しながら、同時に、歴史ある村有施設の活性化にもつなげたい考えだ。

 東京を拠点に活動する作家2人が参加し、7~11月にかけて住民と交流しながら創作に役立てている。「絵描き」の若林菜穂さん(33)は「自分の『習慣』から踏み出して他の場所で学びたかった」と思いを語る。交流を深めた地元の小学生とはすっかり顔なじみだ。
 現在は郷土館で、取材を基に創作した成果発表展「この村のどこかで」を開催中だ。油彩やスケッチなどを並べた若林さんは「村内各所がひそかに題材になっている。『これ知ってる』『あの景色かも』と思い描きながら自由に鑑賞を」と話している。企画展は11月10日まで。
 芸術家の渡邊悠さん(30)は28日と29日、木祖小学校6年生と木くずを使った立体作品作りを楽しんだ。木祖の印象を「人と自然の関係の、ひと言では表現できない複雑さが魅力」と話す渡邊さんは「創作に正解はないけれど、まずは真剣に取り組もう」と児童に呼び掛けていた。渡邊さんの成果発表展は12月に予定している。
 村郷土館の来場者の9割近くは村外者といい、村は「まず村民が足を運ぶ郷土館に」と、作家滞在型制作の拠点としての活用を決めた。村地域おこし協力隊で教育委員会所属の坂口佳奈さんは「作家の作品と郷土館の収蔵品の両方を鑑賞できる展示レイアウトになっている。郷土館に新しい空気を入れる機会にもなる」と期待している。