2024.10.31 みすず野
美術展を見た後、感動が冷めないうちに、作品を印刷したポストカードを買う。評論家の川本三郎さんは、友人たちへの発信用と手元に置く自分用に2枚購入するという(『あのエッセイこの随筆』実業之日本社)◆文芸評論家の髙橋英夫さんも同じように、大いに気に入った展覧会でたくさん買い込んだ。「当分なくならないだろうと思っていたが、気がつくともう一枚も残っていない」(『今日も、本さがし』新潮社)。切手を貼って出すだけだとか◆『漱石の愛した絵はがき』(中島国彦・長島裕子編、岩波書店)には、夏目漱石の門人の野間真綱は、漱石の家の猫が死んだことを、明治41(1908)年9月22日の新聞で知ったとある。鹿児島県の旧制七高に勤めていた。東京での学生時代に漱石の家でかわいがった猫をしのぶ絵はがきは26日の消印◆「『吾輩は猫である』の結末が、ビールを飲んだ揚げ句の猫の死であったことを踏まえた句」という「萩の枝にビール注いで手向けけり」が添えられている。野間は色彩の鮮やかな絵はがきが多いというが、これはモノクロ写真の諏訪湖。湖岸の河口のようだが、現在の面影は全くない。