松本市のAI活用バスのるーと 本格運行へ正念場
松本市が寿エリア(寿、寿台、松原の3地区)と梓川地区で実証運行しているAI(人工知能)を活用した予約制乗り合いバス「のるーと」で、市が本格運行への移行を最終判断する9月末まで1週間を切った。市は本格運行の目安として1日の乗車人数50人(収支率20%)を目標に掲げており、直近8月の利用状況は寿エリアが1日平均56・1人、梓川地区は同36・3人だった。目標値に届かない梓川地区の本格運行が危ぶまれる状況となっている。
寿、梓川の代表者が9月4日、本格運行を求める要望書を臥雲義尚市長に提出した。臥雲市長は「収支率20%を目安として、持続可能なものになるかどうか見極めたい」と回答。地区の代表者は「生活になくてはならない移動手段になっている」と、収支率20%に満たない場合でも本格運行に移行するよう求めたが、臥雲市長はあくまで目標値にこだわる考えを崩さなかった。
梓川地区の利用が伸びていない背景には、寿エリアと比較して商業施設や病院が少ないことや、人口規模が小さいことが考えられる。農家が多く、移動手段として軽トラックを利用する高齢者が多いのも特徴だ。
梓川地区まちづくり協議会の山口高史会長は「高齢者はいずれ車に乗れなくなる。現在の数値目標を見るのではなく、将来のことを踏まえた対応をしてほしい」と求める。
のるーとは交通空白地帯の解消を目的に、昨年10月に実証運行を始めた。交通弱者の高齢者を対象とし、病院や買い物先の近くに乗降ポイントを設置した。運賃は一律300円。実証運行は来年3月末までを予定しているが、利用者が少ない場合は年内にやめる可能性もある。
市公共交通課の大塚友宏課長は「公共交通は乗って維持されるものなので、収支率は確保する必要がある。9月末までの利用状況を見て慎重に判断したい」と話している。