2024.9.19 みすず野
きょう彼岸の入り。おそらく誰もが思う慣用句「暑さ寒さも彼岸まで」に、本当だろうね、と今年ばかりは念押ししたくなる。それでも季節の移り変わりを促すように彼岸花が咲き始めている◆教員などを経て、フォークシンガーとして活躍した岐阜県恵那市出身の笠木透さん(1937~2014)は多くの歌を作った。そのうちの1曲「川のほとり」の3番は「めぐる秋の風が吹く/川のほとりの彼岸花/真っ赤に燃える花なのに/心を許す人は無し」と歌う◆別名は曼珠沙華。地下の鱗茎は有毒だが、水にさらすと良質のデンプンが取れ「飢饉の備えに、またネズミ除けに畦道に植えられた」(『野と里・山と海辺の花』(増村征夫著、新潮文庫)という◆明治35(1902)年のきょう、俳人正岡子規が36歳の若さで亡くなった。「糸瓜咲て痰のつまりし仏かな」など糸瓜を詠み込んだ3句を、亡くなる前日に記したことから「糸瓜忌」と呼ばれる。子規忌、別号由来の獺祭忌ともいう。「田の中の墓原いくつ曼珠沙華」。明治31年の作。『俳句歳時記』(角川書店)に彼岸花は「畑の傍らや墓地など人里近い所に植えられた」とある。