連載・特集

2024.9.13 みすず野

 音楽と記憶の結びつきは、度々実感する。何かのメロディーが流れると、ある光景が浮かぶことがある。これからの季節だと、万国旗を飾った運動会の校庭が目の前に広がる。曲は「クシコス・ポスト」だ◆紅白の鉢巻きを締めた子どもたちが、次の種目に出場するために、駆け足の足並みをそろえて入場するときの音楽だった。あのころは「クシコスの郵便馬車」といった。いま思うと、ずいぶん雰囲気のある曲名だ。ドイツの作曲家、ヘルマン・ネッケの作品◆『生活はクラシック音楽でできている』(渋谷ゆう子著、笠間書院)によると、クシコスは、ハンガリーの騎馬放牧民を指す言葉で、ハンガリー的(クシコス)な乗馬配置(ポスト)を指すと考えられているという◆明治時代に雅楽奏者が紹介し、ハーモニカ演奏の楽曲として楽譜も出版された。昭和になって学校でハーモニカ学習が行われるようになる。「このハーモニカの一般化が、『クシコス・ポスト』の認知度を上げたよう」だと。中学校の音楽会でこの曲をクラスで演奏したが、どの楽器を担当したか忘れてしまった。その程度なので、音楽会の様子は思い出さない。