連載・特集

2024.9.10 みすず野

 早朝は風が冷たく感じる日もあるのに、日が高くなるにつれ気温が上がる。残暑の厳しさはなかなか和らがない。この暑さを喜ぶように、次々に花を付けているのが畑のオクラ◆その花は中心が黒く周りが黄色。配色と花の大きさが畑にそぐわない感じだが、原産地が西アフリカと聞くと納得する。花は大きくて目立つがすぐ落ちる。その後5日ほどで収穫できる◆食感が納豆や山形村特産の長芋などのネバネバと同様で日本人に受け入れられたのだろう。アフリカ出身なのに、しょう油とかつお節をかけられ食卓の人気者になった◆植物学者の稲垣栄洋さんは、オクラは「もともとは奴隷とともに新大陸に渡ってきたといわれている」(『身近な野菜のなるほど観察録』ちくま文庫)という。そして非暴力の黒人公民権運動を指導し、ノーベル平和賞を受賞したキング牧師の演説「私は夢見ています。いつの日か、かつて奴隷だった者の子孫たちと、かつて奴隷主だった者の子孫たちとが兄弟愛をもって同じテーブルにつくことを」を挙げる。「キング牧師が夢見た食卓には、ほかでもない、オクラの料理こそふさわしいといえるだろう」と。