松本市波田の国登録文化財・黒川堰追平隧道 石積みを修復中

明治期から昭和40年代にかけ、山形村や松本市波田地区の農地へ水を運ぶ農業用水路だった国登録有形文化財・黒川堰追平隧道(松本市波田)で、24日から修復工事が行われている。保全を目指す実行委員会の依頼を受けた石材業者が昔ながらの工法で石を積み直しており、今月中には完了する予定だ。
数年前から、隧道の特徴であるアーチ構造の石積みに隙間やせり出しが確認され、今後の保全が課題だった。
林道から続く山道を作業道用に広げる工事を経て、26日から石を一つずつ外し積み直している。城の石垣修復などの経験がある山形村の小野石材店(小野貴義社長)が工事に当たっており、石が元々あった場所に戻すため、記録を取り、一つ一つに番号を付けて慎重に積み直していく。隧道の一番外側の石積みと、水路脇の石垣を修復し、コンクリートなどを使わず積み上げる昔ながらの工法「空石積み」を取り入れている。
ずれは、雨水が石積み内の土に浸透し、土圧が高まったことで生じたという。ここ数年で進行し、大きいもので大人のこぶしくらいの隙間が確認されていた。
実行委は5月に黒川堰土地改良区、松本市、修復費を助成する東日本鉄道文化財団の3団体が設けた。28日に現場を確認した改良区の上條重幸理事長は「皆さんの協力で崩れる前に修復でき安心した」と感謝していた。