連載・特集

2024.8.28 みすず野

 歌に登場する植物の名前は、さんざん繰り返して聴いたり、歌ったりしているので知っているが、ではどの花なのか、この中から選びなさい―という問題があれば、ほとんど不正解だろう。そのことを自覚するようになり、気になっていた花を調べている◆キョウチクトウは夾竹桃と書くというのは、歌のタイトルに漢字が用いられているので知っていた。実物の花を知ったのはつい最近。「夏花の代表種で街路樹などに用いられる」(『日本の樹木 ポケット図鑑』増村征夫著、新潮文庫)とある◆もう一つはサルスベリ。これは歌詞にはないだろう。語感が歌詞にはなりにくい。百日紅と書き「ひゃくじつこう」とも読む。「樹皮が薄くてはがれやすく平滑なので、サルも滑ってしまうだろう」(同)と名付けられたという◆「年齢を重ねるごとに植物への興味が増してきた」とミュージシャンの財津和夫さんはいう(『じじぃは蜜の味』(中央公論新社)。「今年はなぜか桜よりハナミズキを眺めたくなる自分に気付いた」と。漢字は花水木。長い間、変な名前の木だなと思っていた。何となく「鼻水木」かと。大人になってからの話。