連載・特集

2024.8.17 みすず野

 松本市内の放光寺と日帰り温泉施設・枇杷の湯に出掛けた折のこと。立て続けにウグイスのさえずりを耳にした。「春告鳥」の異名があり、その頃に聞くイメージが強い。8月のこんな暑い時期も毎年鳴いていたか、と疑問に思い、ネットをのぞいてみた◆本州中部辺りでは2月初旬から8月下旬までが、よく聞かれる時期という。見張りをしながら「ホーホケキョ」とさえずり、他の鳥に縄張り宣言をしているのは雄。巣に餌を運ぶ雌へ、縄張り内の安全を知らせる合図でもある。さえずる期間が長いのは、一夫多妻制で次々と雌を替えるためだということも分かった◆池田町に住んでいた野鳥研究家の故・田中宏一郎さんの著書にも、ウグイスの記述がある。池田町では、冬は暖かい地方に移動、春に戻ってきて、やぶで暮らす鳥│と紹介。しばしばホトトギスに托卵される、とも◆古くからの人との関わりも述べている。ひな鳥を巣とともに捕り、飼育し、鳴き声のよい成鳥の傍らに置いて鳴き声を学ばせた。「ウグイスを持ち寄って鳴き声を競い合う会も室町時代頃から盛んに行われた」。時代を超えて人は美しいものに魅せられる。