南木曽・梨子沢土石流から10年 教訓語り継ぐ決意新たに

中学生1人が犠牲となり、建物43棟が被災した南木曽町の梨子沢土石流災害は9日、平成26(2014)年の発生から10年を迎える。当日は災害記念碑前で献花式があり、防災研修会も開かれる予定だ。木曽川筋の谷間に集落が点在する険しい地形の町にあって、住民たちは「蛇抜け」と呼んできた土石流災害の記憶を未来へ語り継ぐ決意を新たにしている。
10年前の午後5時40分ころ、街中を流れる木曽川左岸支流の梨子沢で災害は起きた。泥や石、木が塊となって「ぐわっとまくれながら沢を下ってきた」。木曽川対岸の自宅から土石流を目撃した早川親利さん(73)はそう振り返る。甚大な被害を目の当たりにしたが「どうしても記憶は薄れていく。節目に見つめ直し、語り継がなくては」と話す。
町公民館長の岡本智治さん(68)は4年前、南木曽会館にある公民館図書室に「防災コーナー」を設けた。町内で発生した土石流災害について、被害を伝える写真と地図を掲示。「沢という沢は蛇抜けが起きると考えた方がいい。過去を知り備えることが大事」と話す。
町博物館名誉館長の遠山高志さん(77)は、梨子沢を含めこれまで2回土石流を目撃した。「地形上、南木曽は蛇抜けと向き合う『宿命』にある」と指摘。災害に関する前兆現象などの言い伝えは「的を射ているものが多い」とし、「過去の教訓を意識し、注意を欠かさないことが基本」と語る。