連載・特集

2024.7.22 みすず野

 人が集まったさまざまな場所でそれぞれの立場にある人が話をする。そこでは「鉄は熱いうちに打て」や「千里の道も一歩から」だとか「継続は力だ」などどこかで何度も聞いた言葉が語られる◆少年のころはこうした言葉を用いた先生の話にその都度心を打たれ、休み時間になってもそのままの姿勢で座り続けていて、級友にからかわれたことを覚えている。だんだん年を重ねて生意気盛りになると、こうした言葉とそれを発する大人が怪しく見えるようになる。上から語られる言葉には反発すら覚えた◆大勢を前に、その都度気の利いた話をしなければならない立場の人は本当に大変だ。随分前だが親戚の法事で、法要後、若い僧が参列者を前に人生や死について語った。それを聞いた伯父は「あんな若造に言われてもなあ」と耳元でささやいた◆きょうは二十四節気の「大暑」。最も暑いころとされる。暑さ対策がいわれるが「心頭を滅却すれば火もまた涼し」を持ち出されるとむっとする。「火もまた涼し」の後に「かもしれませんね」と続けば、聞き手は余裕で受け止められないか。場合によっては「なんちゃって」でも大丈夫かな。