連載・特集

2024.7.17 みすず野

 ごくわずかな面積なのに、毎年世間より2歩、3歩遅れてようやく始める畑仕事。猫の額のそのまた片隅に植えた2、3本のシシトウが実を付けている。ほぼ毎日数個が収穫できる。土の力に感謝するばかり◆シシトウは唐辛子の甘味種だそうで、時々辛い実もある。詩人の三好達治は「唐辛子」というエッセーで、昔あった種類がめったにないと嘆く。風味が全くだめなのだと。「青い新鮮なのを強火で焼いて、焼きながら、ちょっと醤油にひたして食べる、(驚くほど沢山の量を食べたものです、)あの極めて簡単な極めて風味の高い食物を思うと、さすがに懐旧の情に耐えません」(『三好達治随筆集』岩波文庫)◆猫額畑で取れたシシトウも、油で炒めてしょう油で食べるとうまい。十分風味もあると思うが、これとは別物なのだろう。収穫期間が長いのもありがたい。苗を植えた後、手がかからないのも助かる◆同じ畑のキュウリとナスも取れるようになった。この後はオクラが楽しみだ。ミョウガも初めて4、5本植えてみた。青ジソとミツバは勝手に生えてくる。いずれも酒と相性がいい。夏のささやかな楽しみがここにある。