安曇野市教育委員会が清澤洌の資料を市有形文化財に指定

安曇野市教育委員会は26日、市文書館(堀金烏川)が保管する、旧北穂高村(現・安曇野市穂高北穂高)出身のジャーナリスト・清澤洌(1890~1945)にゆかりの資料を「清澤洌文庫」として市有形文化財に指定した。豊かな国際感覚と幅広い交友のあった清澤が昭和17(1942)年12月から20年5月まで、戦時下の日本社会の観察・批判を記した『暗黒日記』の原本4冊を含む141点で、貴重な資料の数々だ。
原本は『戦争日記』という題で、戦況の悪化とともに悲惨さの増す状況が記されている。「沖縄の戦争はほとんど絶望的であるのは何人にも明瞭だが、新聞はまだ『神機』を言っている。愚かな田舎人でもこれを信じまい」など、清澤の鋭い時局批判が目を引く。
今年は『暗黒日記』が刊行されて70周年の節目となる。原本『戦争日記』は26日に、県立図書館が運営するデジタルアーカイブ「信州デジタルコモンズ」に市文書館がデータを登録し、自由に閲覧できるようにした。
「清澤洌文庫」は、清澤の次女が平成25(2013)年5月に市に寄贈した。原本のほか、数々の著書や英字新聞を切り抜いたスクラップブック、元首相・吉田茂(1878~1967)からの書簡、愛用品の模型帆船など多彩な品がそろう。市文化財保護審議会の答申を受けて、6月21日の市教委定例会で指定が承認された。
太田寛市長は市役所で開いた定例記者会見で「来年は終戦80年とともに清澤さんが亡くなって80年。何らかの形で顕彰していきたい」と述べた。