2024.6.5 みすず野
「座右の銘」を国語辞典で引くと「いつも身辺に置いて日常の戒めとする言葉」(『明鏡国語辞典大修館書店)とある。そんな言葉を集めて、30本の解説文を収めた『仲野教授のこの座右の銘が効きまっせ!』(仲野徹著、ミシマ社)が先頃刊行された◆著者は内科医を経て、大阪大教授を務めた。つらい時や誘惑にかられたり、やすきに流れそうになったりした時に、自分を戒めるような言葉が「意識していなくても、あなたにとっての座右の銘」だと◆「何かを得れば、何かを失う。そして何ものをも失わずに次のものを手にいれることはできない」(開高健)、「いややなぁと思うような仕事ほど引き受けたほうがよろしいで」(松本圭史=著者の大学の先輩)などを解説する◆気に入っている私的な銘として「厚意には甘える」を挙げる。厚意は遠慮なく受け取るのが礼儀で、お礼は本人には返さない。厚意は目上の人から受けることが多い。そういう人は自分より金銭的に恵まれている。だから本人ではなく、若い人に返すのだと。駆け出しのころ昼食をごちそうになったあと、先輩は同じことを話された。この教えは忠実に守っている。