2024.5.17 みすず野
夕暮れ時、昔は「夕方、夕暮れ時を、何か人生の悲哀、もののあわれを誘うしめっぽい時間帯に仕立てたがる傾向があったようだ」(『日本語をみがく小辞典』森田良行著、角川ソフィア文庫)という。だが灯火の普及で「夜は活気ある生活の場と変わり、もはや夕暮れ時は寂しく別れを思う沈んだイメージではなくなった」と説く◆小紙に昨日掲載された安曇野の夕暮れの写真が、それを明快に教えている。豊かな水量で流れる川に支えられた水田が白とも銀ともいえるような色で輝く。その奥には、街の明かりがきらめいている。撮影した午後7時半、一家団らんが始まっている時間だろうか◆そんな人々の営みを見守るように、北アルプスの山並みが黒い塊になってそびえる。夜が明けると、朝日を浴びた山や家々が、水を張った水田に映る水鏡が見られる。その写真は一足先に紙面に載った◆写真は雄弁である。夕暮れの写真を説明しようとしたら、どれだけの言葉が要るだろうか。その情報量は計り知れない。街の明かりは、そこに住む人たちのおだやかな暮らしを発信しているようでもある。それが途切れないようにと強く願う。