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江戸の絵師 傑作巡る新刊 穂高出身の高橋克典さん 『青樓にて 喜多川歌麿「雪月花」異聞』

初挑戦した時代小説を披露する髙橋さん

 安曇野市穂高出身の作家・髙橋克典さん(71)の新刊『青樓にて 喜多川歌麿「雪月花」異聞』が未知谷から出版された。8作目の著書で、初めての時代小説。江戸時代の絵師・喜多川歌麿の最高傑作と称される肉筆画「雪月花」3部作を巡り動き出す、江戸と現代二つの時代場面を同時並行に描いた。

 諸説ある歌麿の出身を「近江ノ国守山郷の下世話な遊女屋」とし、その生い立ちから、歌麿の画才を見いだした出版人・蔦屋重三郎との出会い、遊女を華やかに表現した雪月花の完成に至るまでの生涯を、限られた史実に構想を広げ描き上げた。
 一方の現代。介護を通じ距離感を縮めていく父子のやりとりを軸に、江戸で制作されたとする説が有力な「雪月花」が、栃木で描かれたと考えられる推論を展開した。父親との接点に、ライターとして歌麿を題材とする小説の執筆意欲を醸成していく登場人物は、時代小説に初めて挑んだ髙橋さん自身の姿でもある。
 文筆業を志して松本歯科大を中退後、上京し、フリーライターをなりわいとしながら、生まれ育った穂高を意識した純文学に作風を固めてきた。周囲からのテーマ提案に着手した今回は「当初書けると思わなかったが、自然と登場人物たちが動き出し、結末が導かれた」と手応えをつかんだ。蔦屋重三郎は来年のNHK大河ドラマの主人公として注目が高まる。髙橋さんは「幅広い読者層の関心をつかみたい」と話す。
 雪月花3部作『深川の雪』『品川の月』『吉原の花』を豪華に採用した装丁の単行本256ページ。定価2500円(税別)。購入の問い合わせは平安堂あづみ野店(豊科南穂高)など各書店へ。

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