連載・特集

2024.4.24 みすず野

 本をいかに速く読むか。井上ひさしさんは「ゆっくり読むと速く読める」という。「丁寧に丁寧に読んでいくんです。最初の十ページくらいはとくに丁寧に」登場人物の名前などを押さえながら読むと自然に速くなる。基本的なことが頭に入ると「えっというぐらいに速く読めるようになる」(『本の運命』(文藝春秋)という◆井上さんは、世の中には本を読むのがむやみに速い人がいて、その一人が丸谷才一さん。「あんなに忙しいのに、なんでこれだけの本が読めるのだろう」といい「これは永遠の謎ですね」と◆丸谷さんは「長編小説というのは早く読まなくちゃならない。のんびりと時間を費やしてチータラと読み進んだのでは、おもしろくありません」と語る。「原則として」1日から4日で『罪と罰』『赤と黒』『三四郎』をそれぞれ読み上げる。長編小説とは時間の芸術であり、時間の流れの中で作者や主人公とともに泳ぐ。「その快感が大事」なのだと(『人魚はアカペラで歌ふ』(文藝春秋)◆学生の頃はかなり速く読んだと思っていた。かなりの数をこなした。でも時間だけがたっぷりあっただけなのかもしれない。

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