2024.3.3 みすず野
春に咲く、桃の花の色。「桃色という色名は室町時代から使われ始めました」(『365日にっぽんのいろ図鑑』玄光社)。桃の花そのもので染められたわけでなく紅花やスオウを使って色を再現していたらしい。古くから長く親しまれている伝統ある色だ◆桃は古来、邪気をはらうものとされた。反映するように、昔話で悪い鬼を退治に行く子供が生まれるのは桃からだ。『古事記』で、妻・伊弉冉尊とともに国生みを行った男神・伊弉諾尊は、黄泉の国から逃げる際、最後は桃の実をぶつけて難を逃れている。俗世間を離れた、安楽な別世界、理想郷を桃源郷と呼ぶ◆きょうは桃の節句、ひな祭り。華やかな人形を飾り、彩りの良いちらしずしで食卓を囲み、お祝いをする家庭もおありだろう。初節句を迎える家族や親族であれば、かわいく健やかな成長を願う気持ちはひとしおだ◆ひな祭りのもとになったとされる風習「流しびな」。平安時代には既に貴族が自分にふりかかる災いを紙人形に託して川に流していたという。流しびなの話が出ると、松本を舞台としたテレビドラマ「白線流し」を懐かしく思い出すのは筆者だけだろうか。