連載・特集

2024.3.1 みすず野

 弥生3月の始まり。そう聞くだけで春がすぐそこまで来ているような気がして、明るい気分になるが、雪の予報が出ている。ここは信州なんですよ、という冬の声が聞こえてきそうだ◆作家の川上弘美さんが着用する服は「軽くて暖かいもの」が最優先事項だという。「暖かいものを着なければならないのは、冬に限らない」といい、必ず靴下をはく。冬は「軽いつるつるしたものをたくさん重ねる」(『私のまいにち』3月号、毎日新聞社)そうだ◆冬に親の言うことを聞いてズボン下をはいたのは、中学1年の冬まで。もこもこするのが嫌でたまらなかった。下着もずっと半袖だ。そのために寒いということはない。衣服はできるだけすっきりしたいという思いは、子どものころから変わらない◆川上さんは「この冬は、まるで十二単よのう、とつぶやきながら、たくさんの服をゆっくりと身に着けてゆく日々だ」という。同僚に聞くと、冬は保温力のある長袖の下着を着たり、タイツをはいたりしているそうだ。防寒用の衣服が少しずつ役目を終えるのは桜が咲くころだろうか。残り少なくなった冬のあれこれを楽しみながら春を待ちたい。

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