連載・特集

2024.2.18みすず野

 「さゆを買われていく方っていますか?」。コンビニの商品棚で温められていたペットボトル入りのさゆを見て店員に尋ねた。「ええ、けっこういらっしゃいます」と笑顔で答えが返ってきた◆冷やしたり、常温だったりする天然水入りのペットボトルが恒常的に売られて久しいのだから、さゆ入りのペットボトルが売られていてもおかしくない。でも、販売されていることになぜか「これが商品になるのか」という気持ちが湧き起こった◆社会人になった頃だから、もう30年以上前になる。緑茶の販売で有名な飲料メーカーに勤める友人から自社であったこととして、逸話を聞いたことがある。若手社員が緑茶を缶飲料で販売することを提案したところ、ベテラン幹部社員が「そんなもの100円も出して誰が買うんだ!?」と一笑に付したと。その後、同社が緑茶飲料の販売で後塵を拝したのは言うまでもない◆さゆに違和感を覚えたわが身を振り返った。緑茶飲料の販売提案を笑って取り合わなかった人と、頭の固さが同じではないか。それほどの立場ではないが、誰の話にも耳を傾け、柔軟な姿勢を保たなければと改めて心にとどめた。

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