連載・特集

2024.2.4 みすず野

 旧暦では、きょうのこの日が1年の始まりとされていて、決まりごとや季節の節目の起点となっている。例えば、農作業を始める目安となっていたり、摘んだ茶葉が上等のものとされたりする八十八夜もここから数えた日数◆台風に襲われることが多いため、ともに農家の厄日とされる二百十日、二百二十日もこれに当たる。明治期の小説家で俳人の尾崎紅葉は「枝少し鳴らして二百十日かな」、明治から昭和にかけて活躍した俳人・高浜虚子は「荒れもせで二百二十日のお百姓」と、二百十日や二百二十日を無事に通り越せて安堵する農家の様子をそれぞれ詠んだ◆暦の上では春になったといっても、唱歌「早春賦」の歌詞のとおり「春は名のみの風の寒さ」だが、弱々しかった日差しがだいぶ強くなってきていることを、この日になると実感できる。もっとも近年は温暖化の影響で「春は名のみの...」の方が怪しく、本当に春が訪れたような暖かさの日の年が増えた気もする◆気象庁によると、この日から春分までの間に日本海で低気圧が発達し、初めて南よりの毎秒8メートル以上の風が吹き、気温が上がる現象を春一番と呼ぶ。きょう立春。