連載・特集

2024.2.16 みすず野

 「こないだある新聞のコラム用に『散歩』のことを四百字で書けという電話があった。いつも散歩ばかりしているし、断わったら散歩がきらいなのかいと言われそうなので、めんどくさいけれど引受けちゃった。原稿用紙一枚ぽっちで面白そうなことを書くのは、相手が新聞だとなると、神経を使うせいか、とてもむずかしい」◆「J・J氏」の愛称で若い読者に支持されたジャズや映画、小説などの評論家・植草甚一(1908~79)は「こうしてぼくは嘘つきになった」というエッセーをこう書き出す(『植草甚一読本』晶文社)◆続けて「どうして日本の新聞は短いものがすきなんだろう。外国の新聞には、こんな短いコラムなんてないよ」という。4紙の常設コラムを切り抜いて並べる。長さは似たり寄ったりで800字前後、感心しながらおしまいまで読むのは5回に1回くらいしかないと厳しい◆大抵、400字あたりまでで、それから先は読む気がしないといい原稿用紙2枚より、1枚の方が難しいんだと。小欄は465字。思うように書けないのはそのせいか。毎回、植草さんに最後まで読んでもらえるような文章が書けるかな。

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