連載・特集

2024.1.7みすず野

 きょうは人日。1年間の主要な五つの節句の一つで「春の七草」と呼ばれる7種の若菜を入れたおかゆを食べると、災いをはらい、病気にかからないとされる。おかゆを食べるのは、正月のごちそうで疲れた胃をいたわる意味も◆七草の種類は時代や地方で異なるが、一般的にセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベ、ホトケノザ、スズナ、スズシロを指す。これらは消化や内臓の働きを助ける作用があり、ビタミンやカルシウムといった栄養も多く含まれる◆「かりそめにわか菜摘みけり二三片」。和田村(現松本市)出身で明治から昭和初期に活躍した県内俳壇の重鎮・矢ケ崎奇峰の一句だ。わか菜は春の七草を指し、ふとした心から春の野に出て若菜を2、3片摘んだことよ│の意だが、旧暦だと、正月と春が重なっていたため新年│春、若菜│春の七草が成り立った。和歌だと、若菜を詠んだ代表作に『古今集』や百人一首に採られた光孝天皇の「君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ」がある◆奇峰の句が刻まれた碑が松本市宮渕3の勢伊多賀神社の境内に立つ。俳誌『はゝき木』同人が奇峰の古希を祝って建立した。