連載・特集

2024.1.25みすず野

 穂高神社で「天神さまの梅」として知られる紅梅が、例年より1カ月ほど早く開花したと、昨日付安曇野面に載っていた。花の明るい色に思わず頬が緩む。冷え込んだ朝だけに、春の風が吹いてきたかのようだった◆「梅一輪一輪ほどの暖かさ」(嵐雪)。この句を有名にした読者の受け取り方は「梅 一輪一輪ほどの あたたかさ」。梅が花を付けていくに連れて春が本格的になるという解釈で、春の句。作者の意図は「梅一輪。一輪ほどのあたたかさ」で、一周忌の追善集には「寒梅」、寒中の梅と題して冬の部に入っている◆国文学者の池田弥三郎は『俳句・俳人物語』(ポプラ社)でそう説く。「暦が春をつげない、きびしい寒中に、梅が一輪花をつけた。その花をじっと見ていると、四季の運行はそのたった一輪の梅の花のなかにも動いていて、なるほど、かすかな暖かさが伝わってくる」と◆この冬、最強の寒波襲来という気象情報が伝えられている。咲いたばかりの紅梅に、雪が積もるのだろうか。穂高神社の梅は例年2月中旬、白梅が先に咲くという。紅梅の開花が、何かの吉兆であれかしと願いたくなる新年最初の月だ。