連載・特集

2024.1.14 みすず野

 昔ながらの新春の遊びの一つにかるた取りがある。年間を通して遊んでいいような気もするが、俳句の新年の季語にもなっていることからも、やはり旬は今なのだろう。かるたといえば、代表的なのはやはり百人一首だ◆娯楽が多様化した現代の子どもたちも、百人一首を楽しんでいるのだろうか。そんな素朴な疑問は、松本市和田の窪田空穂生家で開かれた百人一首教室に参加していた小学生たちの、散らし取りに取り組む様子を見て解消された。床に散らばった取り札に目を凝らして、読み札に耳を澄ませて懸命に札を探し、人よりいち早く札に触ろうとする姿は今も昔も変わらないものだった◆筆者が百人一首に興じたのは、いつが最後だっただろう。記憶をたどると、40年ほど前の中学生時代だったような。なんとなく覚えやすかったり、好みだったりする歌の札が置かれた場所をしっかり把握し、取りこぼさないようにする作戦を採っていた◆そんな懐かしい百人一首の歌に触れて、改めて感じたことは日本語の音の響きの美しさだ。札を読む人がうまいということもあるのだろうが、読み終えた後の言葉の余韻に気持ちが和んだ。