連載・特集

2024.1.10 みすず野

 あす11日は鏡開き。鏡餅を割って汁粉やかき餅にして食べると歳時記にある。割るときに、刃物を使い、切ってはいけないとされている。木づちなどを用いて割る。この「割る」の忌み言葉として、「開く」を用いるともある◆鏡餅は多くの家で飾るだろうが、こうして割ることができる餅を供えている家庭はどれほどあるだろう。市販されている鏡餅の外形はプラスチックで、それ自体は食べられない。中に花札ほどの切り餅が入っている。餅そのものは割れない◆それでも鏡開きまでは鏡餅を飾り、紙とプラスチックに分別してから中の餅を取り出していただくことになる。かちかちになった餅を調理するのは一手間だったろうが、この餅は1枚ずつ密封されているので雑煮などにしやすい◆家で餅をついていたころは、床の間に飾る鏡餅を作り、神棚や水場に置く小さなものもいくつか用意した。そうした作業がなくなると、楽ではあるが間違いなく正月の風情は失われていく。年末にホームセンターで鏡餅を求めたが、家族の連絡が悪く、別々に一つずつ購入していた。数が多くても、正月らしさが特段増幅されたわけではなかった。