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値上がりする漢方薬 原料の植物栽培に力

安曇野みらい農園で栽培されているシャクヤク

 物価高がじわじわと生活を圧迫し続けている中、漢方薬も値上がりしている。原料となる生薬は約8割を中国産が占めているが、中国国内での需要増などで輸入価格が上昇し、製薬会社が安定的に確保するのが難しくなっているためだ。国は国産生薬の生産拡大に乗り出しており、松本平でも栽培が始まっている。

 漢方薬を主に取り扱うミトモ薬局(松本市中央3)の薬剤師・福嶋良晶さん(67)は「昨年10月ころから1~2割ほど価格が上がってきた」と話す。できるだけ販売価格を据え置いてきたが、今年9月にやむを得ず値上げに踏み切った。常連客には早めに通知して対策してもらったが、そもそもメーカーが製造を休止した薬もあり影響は大きいという。
 新型コロナウイルス禍で解熱剤など一部の薬が不足したことも、漢方薬の需要増に影響している。業界団体などが平成28(2016)年に設立した薬用作物産地支援協議会(東京都文京区)によると、大学医学部や医科大学で漢方に関する講座が設けられた影響で、医療用漢方製剤の売り上げがここ7年間毎年伸びている。漢方薬を処方する医師が増えている。
 国内における生薬の年間使用量のうち国産品は約1割にとどまっており、国が生産拡大へ対策を進めている。安曇野市三郷明盛の「安曇野みらい農園」では本年度、同協議会の委託を受け、全国の団体や個人に苗を配布する実証実験用に「カノコソウ」と「シャクヤク」を栽培した。あまり手をかけずに順調に生育したといい、農場長の奥原聖人さん(25)は「うまくいきそうなので、自社で販売する分も植え付けした」と話す。同農場は就労継続支援A型事業所で「(雇用する障害者の)安定的収入につながれば」と期待する。
 奥原さんは「実証実験用の栽培を通して、この地域は生薬栽培の適地として可能性があると感じた」と話していた。遊休農地の解消など農業が抱える課題の解消へ効果が期待される。